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○射手座
・ギリシア名:Sagittarius(人馬宮) ・英語名:Archer(射手座) 射手座のモデルとなったのは、半人半馬の怪物、ケンタウロスです。 その性格は粗暴で、酒を狩猟を好み、特に弓の腕に秀でていたとされています。 ケンタウロスはいわば種族の名前で、ギリシア神話の中には何人かのケンタウロスたちが登場していました。 ネッソスというケンタウロスが、典型的なケンタウロスの例です。 英雄ヘラクレスが妻ディアネイラとともにある大河をわたろうとしていたときのことです。 船がなかったので、この深い河を英雄ヘラクレスならともかくディアネイラは渡りきることはできませんでした。 そこで二人は、近くに住んでいるケンタウロスのネッソスに助力を頼みました。河渡しの仕事はなれっこであったネッソスは、二つ返事でヘラクレスたちに協力しました。 ヘラクレスは泳げるので一人でも平気でした。ディアネイラは泳げないので、ケンタウロスのネッソスにまたがって河を渡ることとなりました。 しかし、河の半ばまできたとき、突如ディアネイラが悲鳴を上げました。ヘラクレスが振り返ると、なんとネッソスがディアネイラに暴行を働こうとしているではありませんか。怒り狂ったヘラクレスは強弓をつがえ、ネッソスに瀕死の重傷を負わせました。 ヘラクレスが駆け寄る直前、虫の息のネッソスはディアネイラにこう告げました。 「あなたの美しさに目がくらみ、申し訳ないことをしてしまった。私がここで死ぬのも自業自得であろう。せめてものお詫びに、奥様には私の血を差し上げたい。この血をご主人の肌着に塗っておけば、たとえご主人が他の女性を好きになっても必ずあなたの元へ帰ってくるでしょう」 それだけ言い残すと、ネッソスは息絶えてしまいました。半信半疑ながらも、ディアネイラはネッソスの言うとおり、彼の血を少量とってこっそり隠しておきました。 しばらくした後、ヘラクレスはある捕虜の娘に恋をしました。もしかするとその娘がヘラクレスの正妻になるかもしれない、と噂で聞かされたディアネイラは、ヘラクレスにもう一度振り返ってもらいたい一心で、ネッソスの血をヘラクレスの肌着に塗りつけたのです。 帰宅してきたヘラクレスは、風呂に入った後その肌着を着ました。 するとその途端、この世のものとは思えない苦しみがヘラクレスの体中をおそいました。ネッソスの血は愛の妙薬などではなく、死の毒薬だったのです。百戦錬磨のヘラクレスは、この毒でその生涯を終えてしまいました。 ここからが本題です。 ケンタウロスはネッソスのように粗暴で好色、狡猾な性格を持つ種族ですが、一人だけ例外がいました。トロイア戦争の英雄アキレウスの師、ケイロンです。 ケイロンは古代神クロノスの息子であります。クロノスは、ある娘(ケイロンの母)に「馬」の姿をして交際を申し込み夫婦となったため、ケンタウロスが半人半馬の姿になったとされます。クロノスはゼウスの父親でありますから、ケイロンは主神と異母兄弟ということに。 この時点で、神とは直接のつながりがなく、ポセイドンが生み出したとされる他のケンタウロスとは明確な差が生じています。 ケイロンはアキレウスに武術や狩猟、医術や音楽などを教え込みます。また、アキレウスだけでなく、医術の神アスクレピオスや竜殺しの英雄イアソンの教育者でもありました。 文武の両方に秀でたケイロンはまさに、ギリシアの英雄達全ての先生でありました。 そしてケイロンは死後、その死を悲しむ神々によって天空へとうちあげらげれ、星となりました。 これが射手座(あるいはケンタウロス座)と呼ばれるようになった、ということです。
『ジューン・ブライド』という言葉をご存知でしょうか。
直訳すると『6月の花嫁』。6月に結婚すると幸せになるという言い伝えのことです。知らない人の方が少ないかもしれませんね。 6月=ジューン(June)ですが、この月の呼び方もギリシア神話の神様に由来するものです。 6月は嫉妬深いことでたびたび悲しいエピソードを生み出すゼウスの正妻、ヘラのローマ名ジュノー(Juno)から来ているとされています。 その性格からは想像しがたいですが、もともとヘラは結婚と家庭生活の安泰を司る神。 なので、 「彼女の名前を冠した6月に結婚すれば幸せになれるに違いない!」 と思った人々が作った伝説が『6月の花嫁』として現代まで言い伝えられているのかもしれません。
○蠍座
・ギリシア名:Scorpio(天蝎【てんかつ】宮) ・英語名:the Scorpion(蠍座) 蠍(さそり)座に登場するサソリに関しては、当ホームページで実は簡単に既に解説してしまっていました。 http://www.geocities.jp/ukai3745/Mfile_67.html オリオンとアルテミスの恋話に由来するものなのですが、やはりもう一つのエピソードと比べてあまりに理不尽な展開を持つため、私自身はあまりこちらのエピソードは好きではありません。 個人の好き嫌いはともかく、天空に輝くさそり座・オリオン座は共にこのエピソードに由来しています。
○天秤座
・ギリシア名:Libra(天秤宮) ・英語名:the Balance(天秤座) この星座のモデルは、「公正なる裁き」の象徴でもある天秤であります。 その天秤を所持していたのは、人間に対して大きな愛を持っていたティタン神族の正義の女神、アステリア(アストライアーとも)でありました。 ヘシオドスの『神統記』によれば、神々が作り出した人間は5つの時代を経て現在に至るといわれています(5つの種族説)。これは、プロメテウスが人間を作ったという『パンドラの箱』のエピs-ドとはまた別の説です。 5つの種族の時代の最も古い時代には、人間達は何も苦労することなく、醜い負の欲望に支配されることなく悠々自適な生活を送っていました。 が、時代が下るにつれ、生活を便利にする金属が人間達の間に広まります。そしてそれは同時に、人を傷つける武器にもなっていき、人間はお互いを傷つけるようになっていったのです。 ゼウスを始めとしたオリンポス神族たちは皆、最初は人間達と同じ大地で共に暮らしていたのですが、自らを傷つける愚かな人間を見るのに耐えかねてほとんどの神が天空へと帰って行ってしまいます。 ここでただ一人、人間の中にはまだ善の心があると信じていたアステリアだけは、オリンポスの神々が天に帰ってもまだ地上に残っていました。 しかし、金属がより堅く、より鋭利に進化するにつれ(※:正確には、黄金から鉄へと金属の価値自体は劣化している)、争いは加速し戦争が絶えなくなりました。 最後まで残っていたアステリアもこれには耐えられなくなり、ついには自らの姿を星に変えて(=天秤座)、神々の住まう天空へと帰ってしまいました。
前回との関連も少しあるので、今日は化学物質の語源をひとつ紹介しましょう。
中学や高校で元素記号を勉強したことがある人が多いかと思われますが、その中には神話に由来を持つものが数多くあります。 その中の一つが、核融合や核分裂と言ったキーワードでおなじみの『ウラニウム(uranium)』です。ウラニウムの語源は天空をつかさどるティタン神族、ウラノス(Uranos)に由来しています。 ウラノスはギリシア神話で最も初期に世界を支配していた神でした。 自らの産みの親であった大地の神ガイアと交わり、多くのティタン神族を生み出していきました。 が、あるとき、ガイアはキュクロプス(サイクロプスとも)たちとヘカトンケイルたちを生み出しました。これらは神というよりは怪物に近い存在であり、どちらも奇怪な姿をした巨人だったのです。 父ウラノスは彼らを忌み嫌い、ガイアが止めるのも聞かずに大地の奥にムリヤリ押し込めようとしました。 このことが原因で、ガイアはウラノスを忌み嫌うようになり、自らの末子であったクロノスに命じてウラノスを倒させました。これが原因で、今まで交わっていた天空と大地が、今は決して交わることなく離れるようになったとされています。 このウラノスがなぜ元素の一つの由来になっているのかは不明ですが、核融合という大きな力は天空になぞらえることができるからなのかもしれません。
海を英語で言うとSea、またはOceanでありますが、このうち後者はギリシア神話の神に由来しています。
Oceanの名を後世に残した神の名前はオケアノス(Oceanos)であり、文字通り海、大洋を支配する神でありました。 海を支配するギリシア神話の神としてはポセイドンが著名でありますが、オケアノスとポセイドンでは2つの違いがありました。 1つは、ポセイドンはゼウスの兄弟であるオリンポス神族の一柱であったのに対し、オケアノスはゼウスのはるか先祖に当たる原初の種族、ティタン神族であったことです。 ティタン神族のほとんどはゼウスたちオリンポス神族によって滅ぼされ、生き残ったティタン神族たちも人間界に対しても神界に対しても支配権を主張することが出来なくなりました。そのため、古い時代に海を支配していたのがオケアノス、新しい時代に海を支配していたのがポセイドンという解釈をすることができるでしょう。 もう1つは、ポセイドンは人格を持った神で様々な場所に自分の意志で移動できたのに対し、オケアノスは『海』という概念そのものであったという違いです。 この解釈だと、ギリシア神話においてオリンポス神族が全権を握った後も、ポセイドンとオケアノスはどちらも存在していたことになります。オリンポス神族の時代になっても、物語のいくつかにオケアノスに対して祈る人々が描かれることを考えてみると、こちらの説もあながち外れていないのかもしれません。 オケアノスはティタン神族の祖であるウラノス(天空)とガイア(大地)の子供でありました。 オケアノス自身はティタン神族の中では珍しく非常に穏やかな性格であったため、ティタン神族とオリンポス神族が最後の戦争を行うべく対立していたときも、荒ぶるティタン神族ではなくゼウスたちオリンポス神族に味方し、彼の家族を敵からかくまったということです。 後にオケアノスは自分の妹であるテテュスと結婚し、全世界の川・河の神と、3,000にも及ぶ海の精霊たち(オケアニス:『大洋の娘達』と呼ばれる)を生み出しました。
○乙女座
・ギリシア名:Virgo(処女宮) ・英語名:the Virgin(乙女座) オリンポス12神の中でも最も若かったディオニュソス(ローマ名:バッカス)はあるとき、人間の世界を粗末な姿で旅をしていたことがありました。 夜になり、村で宿を求めるも、金を持っていなさそうな姿の旅人に猜疑心の高い村人は優しくありませんでした。ディオニュソスは一軒一軒民家を回りましたが、誰も宿を与えようとはしません。 が、イカリオスという農夫と、彼の小さな娘エリゴネだけが、何の見返りも求めずにディオニュソスを自宅で歓待しました。 食事は出せる精一杯のものを出し、なんと寝床まで用意してくれたのです。 これに感激したディオニュソスは、そのお礼として、親娘にブドウの木の栽培の仕方とブドウの実から飲み物を造る方法を教えました。ギリシアのワイン製造はここから始まったとされています(ディオニュソスはブドウ酒の神でもあります)。 翌日、ディオニュソスは正体を明かさないまま親娘に別れを告げました。 早速イカリオスは娘と共にブドウを育て、ワインを作ってみました。今までに体験したことのない芳醇な味わいを知り、娘と共に名もなき旅人に感謝するとともに、この味を他の村人にも知ってもらいたいと思って村人全員分のワインを造り、村人に飲ませたのです。 ところが、今まで『ワイン』というものを飲んだことのなかった村人達。 当然「酔い」も経験したことがありません。 ワインを飲んで初めて「酔い」を体験した村人達は皆一様に、 「これは毒に違いない。同じ村に住むものに毒を飲ませるとはなんたることか」 と怒り、ワインを配ったイカリオスを集団でなぶり殺してしまいました。 さらに、この悲報を聞いたイカリオスの娘のエリゴネは、自ら首を吊ってその短い命を絶ってしまったのです。 これを天空から聞いたディオニュソスは大いに怒り、自らの贈り物を拒否した村人の娘を全員例外なく発狂させました。 神の怒りに触れたことに気がついた村人達は泣きながら天に詫び、ディオニュソスを生涯信奉することを誓ったと言います。 怒りも激しかったディオニュソスでしたが、同時に彼は純粋な心を持った親娘の理不尽な死をひどく悲しみました。 特にまだ年端も行かなかったエリゴネの死には、 「まだ地で眠るのは早すぎるだろう」 ということで、ディオニュソス自らエリゴネを天空へと打ち上げ、あまたの星に囲まれた地に眠らせました。 エリゴネは乙女座として、天空に今も輝いています。
○獅子座
・ギリシア名:Leo(獅子宮) ・英語名:the Lion(獅子座) 獅子座のモデルとなったのは、その名前の通り一匹のライオンでありました。 ですが、このライオンは普通のライオンではありませんでした。 父親に怪物・テュポーン、母親に半人半蛇の怪物エキドナを持つ凶暴なライオンで、『ネメアのライオン』と呼ばれていました(「ネメア」は谷の名前)。 テュポーンは、大神ゼウスにも戦いを挑み、一時オリンポス神族たちに恐怖を与えたほどの怪物。その怪物の血を引くネメアのライオンは非常に獰猛で、かつあらゆる剣も矢も通じない強靭な皮膚を持つと言われていました。 このネメアのライオンに挑む宿命を背負わされたのが、前回も紹介したヘラクレスでありました。 彼は実子殺しを償うために12の難業を制覇しなければならなかったのですが、その最初の難業がこのネメアのライオン退治であったと言われています。 ヘラクレスは、この剣も矢も通じない怪物を、自身の人間離れした腕で絞め殺してしまいました。これを見たヘラクレスの父親・ゼウスが、息子の力を讃える意味でライオンを天空へ打ち上げ、獅子座としたということです。 ゼウスにとってみれば、自分を脅威に落とし入れたテュポーンの息子を、自分の自慢の息子が退治してくれたことになります。 この朗報を聞いて、嬉しくてたまらなくなり、「つい」打ち上げてしまった…と言いなおしたほうが、人間味あふれるギリシア神話のエピソードにはしっくりくるかもしれませんね。
○蟹座
・ギリシア名:Cancer(巨蟹宮) ・英語名:the Crab(蟹座) 今日で早くも天文の由来も4回目。 ここまで読んでくださった方であれば、ギリシア神話の中において星座は何かしらのエピソードを持った人物や動物が、神々の手によって天空に打ち上げられることで誕生していたことにお気づきになられたでしょう。 今回紹介する蟹座は、ゼウスの正妻ヘラが空に飾った星でありました。 毎度毎度ゼウスの愛人の話になってしまって申し訳がないのですが、ゼウスの多数の愛人の子供の一人には有名なヘラクレスもいました。 ヘラクレスは父から神の力を譲り受け、人間では類するものがないほどの腕力と叡智を兼ね備えていました。 が、あるときに彼はヘラの嫉妬の矛先を向けられてしまいます。ヘラの呪いによって正気を失ったヘラクレスはわが子を自らの手で殺してしまったのです。 いつの時代でも血を分かつものを――特に実子を――殺すのは許されざる大罪。正気に戻ったヘラクレスが泣きながらに神託を請うと、12の難業を克服すればその罪を償うことができる、との神託が降りました。 この12の難業の一つに、想像上の怪物としては著名なヒドラ退治がありました。 巨大な蛇の姿をしており、その首は何またにも分かれて、いくら斬ってもすぐに再生してしまう恐ろしい怪物でした。 しかし勇気を叡智に恵まれていたヘラクレスは、仲間とともに討伐に向かいます。苦労の末、再生する前に首を焼いてしまうことで不死身であるはずのヒドラを倒すことに成功しました。 このとき、天空からこの様子を見ていたのがヘラクレスを疎ましく思っているヘラ。 ヒドラが劣勢と見るや否や、ヘラクレスに対して一匹の刺客を送りました。それは、鋭いハサミを持った蟹だったのです。 が、ヒドラすら倒してしまったヘラクレスに蟹一匹でどれほどのことができるでしょうか。ヘラの蟹はヘラクレスの足をハサミで攻撃するも、すぐにヘラクレスに踏み潰されて死んでしまいました。 何の影響も及ぼすことなく死んでしまった蟹を見て哀れに思ったヘラは、その魂を天に打ち上げて蟹座としたそうです。
ユリ科の植物で名前は誰でも一度は聞いたことがあるヒヤシンス(hyacinth)の花ですが、この花の語源は太陽の神アポロンにまつわる物語にありました。
アポロンは恋多き神としても知られていますが、あるときヒュアキントスという名の少年に恋をしました(ギリシア神話の時代では同性愛は普通の出来事だったりします。。。)。 ヒュアキントスは絶世の美男子とも言われ、アポロンが今まで恋をした相手の中でも特に愛情を注いだ相手でもありました。 が、彼を同時に愛した神の中に、西方の風を司る神、ゼピュロスもいました。 ゼピュロスもアポロン同様ヒュアキントスにアプローチをしましたが、ヒュアキントスはアポロンの愛のみに応え、ゼピュロスを拒絶したのです。 これに嫉妬したゼピュロスは、アポロンとヒュアキントスが円盤投げ(=昔はオリンピックの競技の一つになるほどメジャーであった)をして遊んでいた時、風を吹き起こしてアポロンの投げた円盤を吹き飛ばしてしまいました。吹き飛ばされた円盤はヒュアキントスの額に当たり、少年は血を流しながらそのまま死んでしまいます。 ヒュアキントスの血は大地に流れ草に染み込み、紺色の花を咲かせました。これが現在のヒヤシンスになった、とされています。 ヒヤシンスの花言葉は『悲しみを超えた愛』、だそうです。 この言葉を名付けたのは他ならぬアポロン…かもしれませんね。
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